9月ごろ社内の評価面談をする際に、相談をされ、それから上司と話し、何度か話を重ねて、本人の意思固しということで、退職の運びとなった。
俺は、聞いた瞬間まぁそうだろうな、と思った。仕事上はいなくなるとキツいのだが、それ以前から、何か足りないな、と感じていた。
正直言って、こいつは足りない奴だった。
そしてチリに来る前も日本での評価は良くなかった。
それでも派遣してしまうのが、当社のダメなところだ。
こいつの何がダメかというと、物事を俯瞰して見れない。
考え方が全体から部分へ行くのではなくて、いつも部分から全体に広げるので、漏れが出る。
それも自分の視点から考えてしまうので、他人の立場から客観視する力が弱い。
考え方が全体から部分へ行くのではなくて、いつも部分から全体に広げるので、漏れが出る。
それも自分の視点から考えてしまうので、他人の立場から客観視する力が弱い。
相談をされた日も、休みの土曜の朝にこいつから電話がかかって来て、
今からちょっと時間があるかと聞くので、俺は分かったと返事をし、家族の用事を済ませた後、
折り返し電話をかけたら、「今日はもう外出しているので明日が良い、明日がダメなら月曜でも良い」と言う。
今からちょっと時間があるかと聞くので、俺は分かったと返事をし、家族の用事を済ませた後、
折り返し電話をかけたら、「今日はもう外出しているので明日が良い、明日がダメなら月曜でも良い」と言う。
舐めてんのか。
出張者のアテンドを手配をしても、車の送迎手配がなっていなかったので、直すよう指示したのだが、その2日後に別の出張手配で同じように車の手配で抜けがあった。
それを指摘すると「あぁそうやってチェックすれば良いんですね」、だと。
お前自身をチェックしてくれ。
他にも幾つもあるが、まぁいいや。
俺の上司は、彼が辞めると言った時、会社を辞めるのは今の職場で上手く行かないのが理由じゃないのか、そうやって辞めると癖になって、また次も逃げて人生ダメになる、と親身になって言っていた。
とても良い上司だ。教育もすごく熱心にやっていた。俺も少しは手伝ったつもり。
でも俺は、そんなに引き止める気が無かった。
一旦気持ちが切れたらもうダメ、というのもあるが、それよりも、こいつが勉強してないから。独身で時間もあるのに、自分の趣味ばっかりで、仕事への投資は俺の知る限り少なかった。参考書籍を紹介しても「いいですね」「貸して下さい」とか。
人ごとか。
オメーが自分で探して自分で勉強せいや。と何度か思った。
赴任してくる時に準備するように指示した書籍類も、「日本の先輩に不要だと言われたから」といって準備して来なかった。
だれの部下になるんだお前は。
こんな調子だ。
だからある時、本人に、社命で来てるんだから腹を決めて精進せい、というようなこと言った。
結果的にそれが一つの引き金になったようだ。
だからある時、本人に、社命で来てるんだから腹を決めて精進せい、というようなこと言った。
結果的にそれが一つの引き金になったようだ。
どうあれ、会社としてはこいつに投資をしてきたわけである。時間も金もかけたのだ。
損失だ。
来る前にやめていれば他の人選もあったはずだ。
はっきり言って、俺が日本でこいつの上司だったら、相当鍛えられるまで海外には送らないだろう。
ただ、本人の名誉の為に言うと、性格はいい奴だ。友達にするには良い。
だけど上司にはしたくない。部下にするなら指導はするが、期待するのは難しい。
そして実は、俺の上司は、そのことを最初に見抜いていた。
逆に、こういう事が起きるのは、突き詰めれば
採用とか異動を決める側に人を見る目が無いからだ。
色んな会社があるだろうが
当社は残念ながら、俺も含めて、優秀な人材が海外に出る訳ではない。
年齢とか階級とか、会社側のスペックに合う奴で、出せる部署で、希望している奴が行く。
優秀さは、その時点で人選できる余地が残っていれば初めて考慮されるのだ。
どうあれ、本人にも会社にも無駄なので、
良い経験だったな、なんて俺はとても言ってやれない。