7/22/2012

日本人の法意識(岩波新書)の感想文

日本へ帰る機会があったので、合計30冊くらい本を買って帰ってきた。
仕事用と趣味用とに大別されるわけだけれど、僕の場合仕事の本と趣味の本はつながることが多い。先日読んでいた「日本人の法意識」(岩波新書)もその一つだ。

もともと松岡正剛の「方法日本」シリーズを読んでいて、その中でこの本が取り上げられていたので興味を持って買ったのだった。この方法日本シリーズ3冊はこれまで読んだ本の中でも特に印象に残る本だった。松岡氏の千夜千冊のストックを下敷きに話が展開されるため、中身が濃密な上に、「もう少しこの点を掘り下げたい人はこの本を読んでみてください」という風に、外に開いているので、知的好奇心を維持したまま次の読書につなげて行けるのだ。また主題も「日本らしさとは何か」というところから、我々は自分の持ち場でどう「日本らしさ」を活かすのかという問いにしていくことができるのだ。というか、それが氏の言う方法日本であると私は理解した訳だが。


ちなみに僕はこの三冊の中で二冊目が最もフックした。というのも日本の近代がどうしてこうなったのか、という点ににじり寄っていたからだ。
その中で、「日本人の法意識」が紹介されているのだが、始めは参考のつもりで読んでいたのだけれど、これは自分の部下・後輩に進めたい本だと思っている。
書かれたのは1967年である。内容は日本人がそれまで持ってきた法意識が、ドイツ・フランスが中心とする近代法のそれとどう異なっているのかを説明している。



この本によれば、日本における近代法の整備は治外法権の撤廃の条件として求められていたもので、国民的議論から生まれたものでも、醸成されたものでもない。

私は読み進めるうち、2010年代の今も、戦前の法意識というのは私たち日本人に抜きがたく残っていて、それがグローバル経済において「日本の常識は世界の非常識」といわれる様々の根底であることを改めて確認されられた。つまり、欧米列強の要求に対峙した明治とグローバリズムに退治している今日の日本は本質的に変わっていない。

ともするとグローバルスタンダードの何がしを理解するには、そのルールを学習し身につけなければならないと考える訳だけれど、それ以上に自分たちは物事をどう考えているのか、どのような癖があるのか、ということを学ばなければ自分たちの弱みにつけ込まれ続けるだろう。

例えばビジネスの世界で「アライアンスを組んでいる相手が、損だけを押し付けて逃げる筈が無い」というのが典型的な日本人の思考回路だろう。そんなことをすれば当事者間だけでなく業界内で信頼を失ってしまう、と。しかしそういうことが平気で行われるのがグローバルスタンダードかもしれない。では我々は我々の中に抜きがたく残っている日本人的倫理観をどのように現実とすり合わせて行くのか。それを考える一助になる一冊だと思う。

7/18/2012

JAL wifiを使ってみた


JALがWifiサービスを開始するという7月15日の成田ーNY便に乗ることになっていたので、使ってみました。
結論として失敗。

成田ーNY線の機内では、機内販売とかの冊子と一緒にWifi利用方法の案内が挟まれいて、
9月末までは一時間無料キャンペーン中ということで、乗客に専用IDとパスが記載されたカードが配られので、そのPassで試してみた。 なおこの無料ID/Passはスクラッチカードを削った後に見えるようになっているのだが、IDがやたら長く文字が小さい上に、スクラッチの銀色と文字の灰色が混ざって非常に見づらい。


この名刺大のカードの裏にスクラッチがある。


さて、機内に飛んでいるWifiに繋いでブラウザを立ち上げるとJAL-Wifiのサイトに飛ばされ、よくある「表示されている文字を入力してください」の認証が要求される。次に、それをクリアするとT-mobileのサイトに飛ぶ。僕のMack Book Proではここで認証ができなかった。先にもらった無料ID/Passを入力するのだが、やたら時間が掛かったあげく、「技術的な問題が発生しました」が出るばかり。

嫁のもらったスクラッチカードのID/Passも使ってみたが、やっぱりだめ。ブラウザを変えても駄目。それで、フライトアテンダントに聞いてみたら、Wifi担当者を呼んでくれて、その人に質問してみたのだが、他の乗客はiPadとかで接続できていたそうだ。サービス自体はOSを限定しているわけではないのだが、僕のPC固有の問題かもしれないとコメント。なのでiPhoneをつかってトライしてみたがやっぱり駄目。

しかしWifi担当者として飛行機乗って旅行できるのっていいなとか思ってしまった。フライト先での休暇くらい数日は取れるだろう。

なおこの担当者が食事後のタイミングで一斉に接続したせいかもしれないとのことだったので、時間を変えてやってみたが、今度は「現在使用できません」とのメッセージ。Wifiは捕まるのだが、ネットへの認証でアウトになる。

サイトの説明に依ると、北極圏近くや特定の国上空だと使用できないことがあるらしい。この時カナダ上空だったのだが、カナダが使用許可を出していないとは考えづらいので、北極圏マターだろうと思いたい。


カナダ北部で出た画面
(右上に「衛星接続無し」とある)

ということでNY到着3時間前でもまだネット接続に成功できなかった。ちょっと仕事をやろうと思っていたので、これは結構痛い。上空から「わははーい」とツイートもしようと思っていたので、残念だ。

左前の席の人はSkypeをやっていたが、二つ隣の席の人も繋がらなくて困っていた様子だったので、MacBookの問題でもなさそうだ。サービスとしてはまだ結構不安定なのかな。

仕組みとしては機体に取り付けられたアンテナから地上の基地局につながっているらしい。担当者の人がビジネスクラスのAPにアクセスが集中しているかもしれないと言っていたので、おそらく機内にいくつかAPがあるのだろう。なおWifiはどのクラスでも使用可能とのこと。



料金は一時間約12ドルor24時間約20ドルなのだが、一旦開始すると接続を切ってもカウントは止まらないらしいので、こんな接続状態ではちょっと有料で使う気起きませんねーのレベルだ。

北極圏に近づくルートだと尚更だろうな。ということで私のような素人にはお勧めできない。


7/07/2012

異なるアライアンス間での預け荷物の無料範囲

先日チリから日本へ帰国するのに、サンチャゴからLANチリでNYのJFK空港を経由し、ANAで日本向けという経路で飛んだ。
LANチリはOneWorldなのでJAL系なのだが、ANAはStarAllianceでもビジネスクラスは個室感がパないので、乗れる時は乗ることにしたのだった。

それは良いとして、アライアンスの違うエアラインの乗り継ぎ時に問題になるのが、無料預け荷物の制限がどうなるかだ。
海外駐在者にとっては一時帰国は食料調達の数少ないチャンスなので、荷物をいくつ何キロ持てるかというのは重要なのだ。

今回の帰国の前に、日本からロス経由サンチャゴへのフライトで同じようにANA-LANで飛んだ事があった。その時に手荷物制限についてANAのサイトで調べたのだった。

基本的にANAのビジネスは二つまで預け荷物は無料だ。
http://www.ana.co.jp/int/guide/baggage.html
ただ、それと別に「提携他社が運航するコードシェア便、他航空会社便が含まれるご旅程」として下記の記載がある。
”無料手荷物許容量:原則としてお客様の航空券面上に記載された無料手荷物許容量が適用されます。こちらをご参照ください”
これを見て、僕のE-ticketには3PC(piece)という記載があったので、3つまで無料と判断してカウンターにチェックインした。そうしたら、やっぱりというか、引っかかったのだけれど、その時は自分のE-Ticketを見せたらすんなり通った。

ただ今回JFKのANAカウンターでは、すんなり通らなかった。三つ目の荷物には100ドル掛かるというのだ。マネジャーの人も出てきて、これは無料範囲外だと言われたのだ。曰くLANとANAはアライアンスが無いので、荷物についても合意が無いとか。そこで僕は「払うべきものは払うけど、この間は無料だったよ」と言ったところ、きちんと受け止めてくれて調べてくれた。それで、確かに無料になっている、調べますのでちょっとラウンジでお待ちください、ただその結果有料となった場合にはお支払い頂きますということになった。
で、ラウンジで待っていたのだけれど、ANAのラウンジにはコンビニのおにぎりがある。それが海外駐在には滅茶苦茶旨い。なんでこんなに旨いのおにぎり。
そうして待っていたら、ちょっと小便がしたかったのだけど、マネジャーが来て、やっぱり有料になるとのことだった。「まぁそれはいいけど、一応僕の理屈を説明するね」という感じで、実際にそう言った訳ではないけど、前述のANAのサイトの記載を見せて、それから僕のE-Ticketを見せて、だから僕はこれは3個無料と判断したんだということを説明した。そうしたらマネジャーの人が、"I understand your point"と言って、ちょっと旅行会社にコンタクトしてみると言うことで、もう一度戻っていった。

実はこのマネジャーさんは日本語ができない人(たぶん米国人)だったので、ANAの日本語サイトを訳してもらうのに、日本人スタッフの人を呼んでもらっていた。といってもANAもちゃんと英語サイトを整備していて、最終的にそれを見たのだけれど。
で、その人が僕らのやり取りしている時に、僕のE-ticketを見て「これは旅行会社が(独自に)出しているものなのでは?」と言ってきた。ずいぶん当てずっぽうなことをいうんだな、と思ったけど、結構日本人はそういう風に当てずっぽうなことを言って、何となくその場を収めようとする。和を以て尊しと為すというヤツだ。個人的には、そういうの気持ちは解らなくはないが、もうそういう世の中じゃなくなってしまったと思う。

それで、最終的にマネジャーの人が帰ってきて、「旅行会社にもコンタクトした結果、確かに3PCになっている。ただANAのシステムでは2PCになっているんだ。」それで僕も何故ANA側がWebに書いてあるのと違う対応に拘るのか理解できて「Ah, now I understand you」とかなんとか言ってたら、マネジャーさんが、「確かに貴方の言う通りなので今回は無料にします。ただシステム上の問題があるので、今後これを解決して、その結果もしかしたら2個ということになるかもしれません。」ということだった。
まぁ今後2個になってしまったとしたら、ちょっと残念だし、議論始めてから終わるまで途中インターバルも含めて2時間弱掛かったのだけれど、僕としてはそのマネジャーさんに誠意持って対応してくれたので、全く不快感はなかった。

久しぶりにBlogを書いたのだけれど、何で書きたくなったかというと、今回の出来事が日本のエアラインで、いわゆる日本的ではない解決に落ち着いたからだ。マネジャーさんも日本語は通じなかったし、2度有料だと言われても、こちらの主張を説明したら、それが通って無料になった。
海外駐在前の僕だったら、そこまで議論せずに払ってしまえという感じになっていたかもしれない。日本では企業側もクレーマー扱いにしてオッケーしとけという話になっていたかもしれないし、もしかしたら僕の一回目(ロス経由の時)もそういう対応だったかもしれない。そういう等閑なところを残さず、はっきりできたので気持ちがよかったのだ。